ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第16弾!!“勝新”の監督デビュー作について語る!

「スカパー!」の公認ガイド誌「月刊スカパー!」(ぴあ刊)とチャンネルNECOがコラボする連載コラム。NECOで放送する映画やドラマの見どころを気鋭の映画ライターさんたちが思い入れたっぷりに語り尽くしてくれます。
第16回の今回は、5月に放送する“勝新”の監督デビュー作『顔役』の映画作りの常識を覆す前衛的でかつPOPな演出の素晴らしさについて、ライターの泉英一さんが熱く語る!

映画作りの常識を覆す勝新の遊び心と矜持
'71年に劇場公開された『顔役』は、我らが“勝新”こと稀代の怪優・勝新太郎の監督デビュー作。破天荒な刑事が捨て身で巨悪に立ち向かっていく姿を描いたハードボイルドな一作だ。
主人公の刑事を演じるのも、もちろん勝新。「飲む・打つ・買う」は当たり前、自分が取り締まっているヤクザ以上にヤクザな刑事、というキャラクターは痛快至極だが、何より驚かされるのは、この主人公のキャラクター同様、いや、それ以上に、作品そのものが“型破り”だということ。勝新は、満を持してメガホンをとったこの作品で、いきなり映画の常識を壊しまくっているのである。
まず特筆すべきは、手持ちカメラを多用した映像演出。なぜか大写しされる水虫の足の指やオッサンのハゲ頭、ガラスの机に逆さまに反射した刑事の顔。はたまた、1シーンの中で主人公の“見た目”のショットと客観的視点によるショットを混在させるという離れ業もやってのける。見る者を不安に陥れるようなシュールな映像世界はインパクト絶大だ。またその一方でリアリティーにもこだわっており、ストリップ小屋の踊り子の役はホンモノを起用しているのだとか。それまでの日本映画界の常識を覆す、こうした数々の大胆な仕掛けによって、そしてさらにはGSの立役者でもある名コンポーザー・村井邦彦のグル―ヴィーな音楽とも相まって、本作には最初から最後まで、得体の知れないパワーが画面いっぱいにみなぎっているのだ。
脚本は黒澤明作品で知られる菊島隆三と勝新が共同で手掛け、共演には山崎努、太地喜和子、大滝秀治、そして実兄の若山富三郎ら、豪華な布陣が集結(ちなみに勝新&山崎努の顔合わせは、のちに黒澤明の『影武者』で共演するはずだった、いわくつきのコンビ!)。スト―リーの骨格や俳優陣の演技力がしっかりしているからこそ、勝新は斬新さを極めた演出に没頭できたのかもしれない。
「映画文法? そんなもん誰が決めたんだ!」――勝新は、本作の撮影現場でスタッフにこんなふうに怒鳴り散らしたという。当時の彼は、自由な制作環境を確保すべく勝プロダクションを立ち上げるも、旧態依然とした作品づくりを続ける日本映画界に不満を抱いていたようだ。しかし、勝新は決して闇雲に映画の常識を壊しにかかっているわけじゃない。その破壊衝動を支えているのは、「誰も見たことのない映画を作ってやろう」という遊び心と矜持。“勝新=豪放らい落な役者バカ”のパブリックイメージとは裏腹に、彼は前衛的かつPOPな映像作家の顔も持つ、まさしく“型破り”の才能の持ち主なのだ。かっこいいぜ、勝新!
なお、チャンネルNECOでは、「【特集】常識を吹っ飛ばせ!型破り刑事(デカ)」と題し、『顔役』のほか、情け無用の刑事“コブラ”(田宮二郎)が政財界をも牛耳る暗黒組織に闘いを挑む痛快アクション『撃たれる前に撃て!』('76年・井上梅次監督)、妻を殺された刑事(天知茂)の復讐劇を乾いたタッチで描く『殺(バラ)すまで追え 新宿25時』('69年・長谷和夫監督)を放送。、『顔役』で勝新が演じるのは字面通りの“型破り刑事”だが(それだけに終盤“正義とは何か”という根源的な問いに直面してしまうわけだが)、こちらの2作の主人公は、あまりの正義感の強さゆえに警察という組織に収まることができず、期せずして常識の枠を逸脱してしまうという、悲しき宿命を背負った刑事たち。とはいえ、三者三様のダンディズムを感じさせる、掛け値なしに“オットコ前な映画”であることに変わりはない。…あ、ちなみに3作とも、オットコ前映画に欠かせないエロ要素はしっかり押さえてます。常識を吹っ飛ばさない程度の、ほどよいお色気をご堪能あれ。
文/泉 英一(ライター)
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